impl Trait

impl Traitは2つの利用方法があります:

  1. 引数の型
  2. リターン型

引数の型

あなたの関数がジェネリックなトレイトを使用していて、特定の型を意識していない場合、impl Traitを引数の型として利用して、関数宣言をシンプルにできます。

例えば、次のコードを考えてみましょう:

fn parse_csv_document<R: std::io::BufRead>(src: R) -> std::io::Result<Vec<Vec<String>>> {
    src.lines()
        .map(|line| {
            // ソースのそれぞれの行について
            line.map(|line| {
                // 行を読み込んだら処理します。そうでなければエラーを返します。
                line.split(',') // 行をカンマで分割します。
                    .map(|entry| String::from(entry.trim())) // 前後の空白を削除します。
                    .collect() // 各行の全ての文字列をVec<String>に集めます。
            })
        })
        .collect() // 全ての行をVec<Vec<String>>に集めます。
}

parse_csv_documentはジェネリックなので、BufReadを実装する任意の型を取ることができます。例えば、BufReader<File>[u8]です。Rがどんな型かは重要ではなく、srcの型宣言に使われているだけなので、この関数は以下のように書くこともできます:

fn parse_csv_document(src: impl std::io::BufRead) -> std::io::Result<Vec<Vec<String>>> {
    src.lines()
        .map(|line| {
            // ソースのそれぞれの行について
            line.map(|line| {
                // 行を読み込んだら処理します。そうでなければエラーを返します。
                line.split(',') // 行をカンマで分割します。
                    .map(|entry| String::from(entry.trim())) // 前後の空白を削除します。
                    .collect() // 各行の全ての文字列をVec<String>に集めます。
            })
        })
        .collect() // 全ての行をVec<Vec<String>>に集めます。
}

impl Traitを引数の型として利用するということは、どのような形式の関数であるか明示できないので、注意してください。例えば、parse_csv_document::<std::io::Empty>(std::io::empty())は2番目の例では動作しません。

リターン型

あなたの関数がMyTraitを実装する型を返す場合、リターン型を-> impl MyTraitのように書けます。これで型シグネチャをとてもシンプルにできます。

use std::iter;
use std::vec::IntoIter;

// この関数は2つの`Vec<i32>を組み合わせて、そのイテレータを返します。
// リターン型がとても複雑です!
fn combine_vecs_explicit_return_type(
    v: Vec<i32>,
    u: Vec<i32>,
) -> iter::Cycle<iter::Chain<IntoIter<i32>, IntoIter<i32>>> {
    v.into_iter().chain(u.into_iter()).cycle()
}

// これは全く同じ関数ですが、リターン型に`impl Trait`を使っています。
// とてもシンプルですね!
fn combine_vecs(
    v: Vec<i32>,
    u: Vec<i32>,
) -> impl Iterator<Item=i32> {
    v.into_iter().chain(u.into_iter()).cycle()
}

fn main() {
    let v1 = vec![1, 2, 3];
    let v2 = vec![4, 5];
    let mut v3 = combine_vecs(v1, v2);
    assert_eq!(Some(1), v3.next());
    assert_eq!(Some(2), v3.next());
    assert_eq!(Some(3), v3.next());
    assert_eq!(Some(4), v3.next());
    assert_eq!(Some(5), v3.next());
    println!("all done");
}

より重要なことに、Rustの型には書き表せないものがあるのです。例えば、あらゆるクロージャは独自の無名な具象型を持ちます。impl Trait構文がない時は、クロージャを返すにはヒープ上に置かねばなりませんでした。しかし今では次のようにすべて静的に行えます。

// 入力に`y`を加える関数を返します。
fn make_adder_function(y: i32) -> impl Fn(i32) -> i32 {
    let closure = move |x: i32| { x + y };
    closure
}

fn main() {
    let plus_one = make_adder_function(1);
    assert_eq!(plus_one(2), 3);
}

impl Traitを使って、mapfilterクロージャを使うイテレータを返すこともできます。おかげでmapfilterを簡単に使えます。クロージャ型は名前を持たないので、あなたの関数がクロージャを持つイテレータを返す場合、明示的なリターン型を書くことはできません。しかしimpl Traitを使うことで簡単にできます:

fn double_positives<'a>(numbers: &'a Vec<i32>) -> impl Iterator<Item = i32> + 'a {
    numbers
        .iter()
        .filter(|x| x > &&0)
        .map(|x| x * 2)
}

fn main() {
    let singles = vec![-3, -2, 2, 3];
    let doubles = double_positives(&singles);
    assert_eq!(doubles.collect::<Vec<i32>>(), vec![4, 6]);
}