impl Trait
impl Trait
は2つの利用方法があります:
- 引数の型
- リターン型
引数の型
あなたの関数がジェネリックなトレイトを使用していて、特定の型を意識していない場合、impl Trait
を引数の型として利用して、関数宣言をシンプルにできます。
例えば、次のコードを考えてみましょう:
fn parse_csv_document<R: std::io::BufRead>(src: R) -> std::io::Result<Vec<Vec<String>>> { src.lines() .map(|line| { // ソースのそれぞれの行について line.map(|line| { // 行を読み込んだら処理します。そうでなければエラーを返します。 line.split(',') // 行をカンマで分割します。 .map(|entry| String::from(entry.trim())) // 前後の空白を削除します。 .collect() // 各行の全ての文字列をVec<String>に集めます。 }) }) .collect() // 全ての行をVec<Vec<String>>に集めます。 }
parse_csv_document
はジェネリックなので、BufReadを実装する任意の型を取ることができます。例えば、BufReader<File>
や[u8]
です。R
がどんな型かは重要ではなく、src
の型宣言に使われているだけなので、この関数は以下のように書くこともできます:
fn parse_csv_document(src: impl std::io::BufRead) -> std::io::Result<Vec<Vec<String>>> { src.lines() .map(|line| { // ソースのそれぞれの行について line.map(|line| { // 行を読み込んだら処理します。そうでなければエラーを返します。 line.split(',') // 行をカンマで分割します。 .map(|entry| String::from(entry.trim())) // 前後の空白を削除します。 .collect() // 各行の全ての文字列をVec<String>に集めます。 }) }) .collect() // 全ての行をVec<Vec<String>>に集めます。 }
impl Trait
を引数の型として利用するということは、どのような形式の関数であるか明示できないので、注意してください。例えば、parse_csv_document::<std::io::Empty>(std::io::empty())
は2番目の例では動作しません。
リターン型
あなたの関数がMyTrait
を実装する型を返す場合、リターン型を-> impl MyTrait
のように書けます。これで型シグネチャをとてもシンプルにできます。
use std::iter; use std::vec::IntoIter; // この関数は2つの`Vec<i32>を組み合わせて、そのイテレータを返します。 // リターン型がとても複雑です! fn combine_vecs_explicit_return_type( v: Vec<i32>, u: Vec<i32>, ) -> iter::Cycle<iter::Chain<IntoIter<i32>, IntoIter<i32>>> { v.into_iter().chain(u.into_iter()).cycle() } // これは全く同じ関数ですが、リターン型に`impl Trait`を使っています。 // とてもシンプルですね! fn combine_vecs( v: Vec<i32>, u: Vec<i32>, ) -> impl Iterator<Item=i32> { v.into_iter().chain(u.into_iter()).cycle() } fn main() { let v1 = vec![1, 2, 3]; let v2 = vec![4, 5]; let mut v3 = combine_vecs(v1, v2); assert_eq!(Some(1), v3.next()); assert_eq!(Some(2), v3.next()); assert_eq!(Some(3), v3.next()); assert_eq!(Some(4), v3.next()); assert_eq!(Some(5), v3.next()); println!("all done"); }
より重要なことに、Rustの型には書き表せないものがあるのです。例えば、あらゆるクロージャは独自の無名な具象型を持ちます。impl Trait
構文がない時は、クロージャを返すにはヒープ上に置かねばなりませんでした。しかし今では次のようにすべて静的に行えます。
// 入力に`y`を加える関数を返します。 fn make_adder_function(y: i32) -> impl Fn(i32) -> i32 { let closure = move |x: i32| { x + y }; closure } fn main() { let plus_one = make_adder_function(1); assert_eq!(plus_one(2), 3); }
impl Trait
を使って、map
やfilter
クロージャを使うイテレータを返すこともできます。おかげでmap
やfilter
を簡単に使えます。クロージャ型は名前を持たないので、あなたの関数がクロージャを持つイテレータを返す場合、明示的なリターン型を書くことはできません。しかしimpl Trait
を使うことで簡単にできます:
fn double_positives<'a>(numbers: &'a Vec<i32>) -> impl Iterator<Item = i32> + 'a { numbers .iter() .filter(|x| x > &&0) .map(|x| x * 2) } fn main() { let singles = vec![-3, -2, 2, 3]; let doubles = double_positives(&singles); assert_eq!(doubles.collect::<Vec<i32>>(), vec![4, 6]); }