テストケース:単位を扱う

共通の単位同士を扱う際のチェックのために、Addを幽霊型を用いた実装にすると便利な場合があります。その場合Addトレイトは以下のようになります。

// このように定義しておくと、`Self + RHS = Output`であることが保証され、
// かつ、impl時にRHSの型が明示されていない場合、デフォルトでSelfと同じに
// なります。
pub trait Add<RHS = Self> {
    type Output;

    fn add(self, rhs: RHS) -> Self::Output;
}

// `Output`は`T<U>`でなくてはならないので`T<U> + T<U> = T<U>`となります。
impl<U> Add for T<U> {
    type Output = T<U>;
    ...
}

以下は全体を示した例です。

use std::ops::Add;
use std::marker::PhantomData;

/// 単位を定義するため、空の列挙型を作成。
#[derive(Debug, Clone, Copy)]
enum Inch {}
#[derive(Debug, Clone, Copy)]
enum Mm {}

/// `Length`は`Unit`という幽霊型パラメータを持つ型ですが
/// 長さを表す型はジェネリック型ではなく`f64`です。
///
/// `f64`ははじめから`Clone`、`Copy`トレイトを持っています。
#[derive(Debug, Clone, Copy)]
struct Length<Unit>(f64, PhantomData<Unit>);

/// `Add`トレイトは加算演算子(`+`)の挙動を定義します。
impl<Unit> Add for Length<Unit> {
    type Output = Length<Unit>;

    // add()は`Length`の新しいインスタンスを返します。
    // Lengthの中の値は合計値になっています。
    fn add(self, rhs: Length<Unit>) -> Length<Unit> {
        // ここでの`+`は`f64`の`Add`実装を呼び出します。
        Length(self.0 + rhs.0, PhantomData)
    }
}

fn main() {
    // `one_foot`が幽霊型`Inch`を持つように明示します。
    let one_foot:  Length<Inch> = Length(12.0, PhantomData);
    // `one_meter`が幽霊型`Mm`を持つように明示します。
    let one_meter: Length<Mm>   = Length(1000.0, PhantomData);

    // 以下の`+`は上で定義した`Length<Unit>`用の`add()`メソッドを呼び出します。
    //
    // `Length`は`Copy`トレイトを持っているため、`add()`は`one_foot`と`one_meter`
    // を消費する代わりにそのコピーを作り、`self`、`rhs`として扱います。
    let two_feet = one_foot + one_foot;
    let two_meters = one_meter + one_meter;

    // 加算が問題なく実行されていることを確認。
    println!("one foot + one_foot = {:?} in", two_feet.0);
    println!("one meter + one_meter = {:?} mm", two_meters.0);

    // 異なる単位間の加算は意味を成さないので、
    // 以下はきちんとコンパイルエラーになります。
    // コンパイルエラー:タイプミスマッチ
    //let one_feter = one_foot + one_meter;
}

参照

借用 (&), 境界 (X: Y), 列挙型, impl & self, 演算子のオーバーロード, ref, トレイト (X for Y), タプル構造体.