ドキュメンテーションテスト
Rustのプロジェクトでは、ソースコードに注釈する形でドキュメントを書くのが主流です。ドキュメンテーションコメントの記述はCommonMark Markdown specificationで行い、コードブロックも使えます。Rustは正確性を重視しているので、コードブロックもコンパイルされ、テストとして使われます。
/// 最初の行には関数の機能の短い要約を書きます。
///
/// 以降で詳細なドキュメンテーションを記述します。コードブロックは三重のバッククォートで始まり、
/// 暗黙的に`fn main()`と`extern crate <クレート名>`で囲われます。
/// `doccomments`クレートをテストしたいときには、次のように記述します。
///
/// ```
/// let result = doccomments::add(2, 3);
/// assert_eq!(result, 5);
/// ```
pub fn add(a: i32, b: i32) -> i32 {
a + b
}
/// 一般的に、ドキュメンテーションコメントは
/// "Examples", "Panics", "Failures" という章から成ります。
///
/// 次の関数は除算を実行します。
///
/// # Examples
///
/// ```
/// let result = doccomments::div(10, 2);
/// assert_eq!(result, 5);
/// ```
///
/// # Panics
///
/// 第2引数がゼロであればパニックします。
///
/// ```rust,should_panic
/// // ゼロで除算するとパニックします
/// doccomments::div(10, 0);
/// ```
pub fn div(a: i32, b: i32) -> i32 {
if b == 0 {
panic!("Divide-by-zero error");
}
a / b
}
ドキュメンテーションコメント中のコードブロックは、cargo test
コマンドで自動的にテストされます。
$ cargo test
running 0 tests
test result: ok. 0 passed; 0 failed; 0 ignored; 0 measured; 0 filtered out
Doc-tests doccomments
running 3 tests
test src/lib.rs - add (line 7) ... ok
test src/lib.rs - div (line 21) ... ok
test src/lib.rs - div (line 31) ... ok
test result: ok. 3 passed; 0 failed; 0 ignored; 0 measured; 0 filtered out
ドキュメンテーションテストの目的
ドキュメンテーションテストの主な目的は、実行例を示すことであり、これは最も大切なガイドラインの一つにもなっています。これにより、ドキュメントの例を実際に動くコードとして使うことができます。しかしながら、main
が()
を返すために、?
を使うとコンパイルに失敗してしまいます。ドキュメンテーションでコードブロックの一部を隠す機能で、この問題に対処できます。つまり、fn try_main() -> Result<(), ErrorType>
を定義しておきながらそれを隠し、暗黙のmain
の内部でunwrap
するのです。複雑なので、例を見てみましょう。
/// ドキュメンテーションテストで、`try_main`を隠して使います。
///
/// ```
/// # // 行頭に `#` を置くと行が隠されるが、コンパイルには成功します。
/// # fn try_main() -> Result<(), String> { // ドキュメントの本体を囲う行
/// let res = doccomments::try_div(10, 2)?;
/// # Ok(()) // try_mainから値を返します
/// # }
/// # fn main() { // unwrap()を実行します。
/// # try_main().unwrap(); // try_mainを呼びunwrapすると、エラーの場合にパニックします。
/// # }
/// ```
pub fn try_div(a: i32, b: i32) -> Result<i32, String> {
if b == 0 {
Err(String::from("Divide-by-zero"))
} else {
Ok(a / b)
}
}
参照
- RFC505 ドキュメンテーションのスタイルについて
- API Guidelines ドキュメンテーションのガイドラインについて